前回の続きです.
前回は,気象条件が異なる2009年と2010年について,2009年モデルによって2010年の最大電力供給も説明でき,また,2010年モデルによって2009年の最大電力供給も説明できるということを説明しました.
ちなみに関西電力については次の図のようになります.
結局,このことは何を説明しているかと言いますと,
2009年と2010年については気温の影響によらない共通の電力需給構造があり,2009年モデルや2010年モデルは,その構造を適切に捉えたものであると考えることができます.言い換えると,
2009年モデルや 2010年モデルはいわば震災前の電力需給構造を表したものである
と言うことができます.このことについては,AIC(赤池情報量規準)によっても説明できるのですが,この説明は後に回します.
次に,2011年のデータを,2009年モデルや2010年モデルに代入することを考えます.これはつまり,2009年(2010年)と同じような電力消費が行われた場合,2011年はどの位の電力供給となるか,という予測ができます.これと,実際の電力供給量を比較することで,何か見えてくるかも知れません.
そこで,代入した結果が次のグラフになります.上は東京電力について2009年モデルと2010年モデルで2011年の電力供給を予測したもの,下は関西電力についてのものです.
どちらも,赤い四角が45度線より下方にあることが見てとれると思います.
横軸は最大電力供給の予測値 ,縦軸は最大電力供給の実測値です.45度線に存在すれば,予測値=実測値,となります.とすると,45度線より下方にあるということは,予測値に比べて実測値の方が最大電力供給が少ない,ということを言っているに他なりません.
具体的には,東京電力では,推定値に比べると実測値の方が,2009年モデルを用いた推定では,2011年の最大電力供給量は679万kW少なく,2010年モデルを用いた推定では714万kW少なくなりました.関西電力では,2009年モデルを用いた推定では,2011年の最大電力供給量は174万kW少なく,2010年モデルを用いた推定では177万kW少なくなりました.
震災直後で,新電力や太陽光発電,自家発電の増強等が殆ど行われていないを考慮すると,これらの減少は,節電等による東京電力管内および関西電力管内における社会的電力需要の減少であると考えるのが妥当と言えるでしょう.具体的には,東京電力では15〜16%の電力供給に相当する節電,関西電力では7%の電力供給に相当する節電がなされたと考えられます.
東京電力の節電比率が関西電力のそれに比べて大きいのは,東京電力管内では法的強制力を持つ節電が行われたのに対し,関西電力管内では法的強制力を伴わないソフトな10%の節電要請に留まったため,と考えられます.
続きはその3で記載します.
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