2016年10月28日金曜日

電気三学会関西支部専門講習会で講演しました

今年,とある技術セミナーの講師をやったご縁で,ある企業の方から今回の講演の依頼を受けました.
ということで,大阪市にある中央電気倶楽部で「人の内面状態理解のための生体情報センシング最新動向」という勉強会の中で,「ドライバモニタリング技術の研究開発動向と展望〜自動運転の時代に向けて〜」というタイトルで講演してきました.

今回の受講者は50名程度とのことで,学生含めた大学関係者の受講者が多かった様子です.

因みに私は電気三学会(電気学会,電子情報通信学会,映像情報メディア学会)の会員ではないので,ちょっと場違い感がありましたが,やはり,ちょっと場違いな発表だったかも知れません.話した内容はヒューマンファクタに関する話.しかし,他の先生方はハードに近い話が多かったので,あまり受けなかった感触です.

まあ,たまにはこういうこともあるかな.

久しぶりの出張で,ちょっとだけ息抜きができました.



2016年10月16日日曜日

電力供給の統計モデリングのお話(その2)

前回の続きです.

前回は,気象条件が異なる2009年と2010年について,2009年モデルによって2010年の最大電力供給も説明でき,また,2010年モデルによって2009年の最大電力供給も説明できるということを説明しました.

ちなみに関西電力については次の図のようになります.



結局,このことは何を説明しているかと言いますと,

2009年と2010年については気温の影響によらない共通の電力需給構造があり,2009年モデルや2010年モデルは,その構造を適切に捉えたものであると考えることができます.言い換えると,

2009年モデルや 2010年モデルはいわば震災前の電力需給構造を表したものである

と言うことができます.このことについては,AIC(赤池情報量規準)によっても説明できるのですが,この説明は後に回します.

次に,2011年のデータを,2009年モデルや2010年モデルに代入することを考えます.これはつまり,2009年(2010年)と同じような電力消費が行われた場合,2011年はどの位の電力供給となるか,という予測ができます.これと,実際の電力供給量を比較することで,何か見えてくるかも知れません.

そこで,代入した結果が次のグラフになります.上は東京電力について2009年モデルと2010年モデルで2011年の電力供給を予測したもの,下は関西電力についてのものです.



どちらも,赤い四角が45度線より下方にあることが見てとれると思います.

横軸は最大電力供給の予測値 ,縦軸は最大電力供給の実測値です.45度線に存在すれば,予測値=実測値,となります.とすると,45度線より下方にあるということは,予測値に比べて実測値の方が最大電力供給が少ない,ということを言っているに他なりません.

具体的には,東京電力では,推定値に比べると実測値の方が,2009年モデルを用いた推定では,2011年の最大電力供給量は679万kW少なく,2010年モデルを用いた推定では714万kW少なくなりました.関西電力では,2009年モデルを用いた推定では,2011年の最大電力供給量は174万kW少なく,2010年モデルを用いた推定では177万kW少なくなりました.

震災直後で,新電力や太陽光発電,自家発電の増強等が殆ど行われていないを考慮すると,これらの減少は,節電等による東京電力管内および関西電力管内における社会的電力需要の減少であると考えるのが妥当と言えるでしょう.具体的には,東京電力では15〜16%の電力供給に相当する節電,関西電力では7%の電力供給に相当する節電がなされたと考えられます.

東京電力の節電比率が関西電力のそれに比べて大きいのは,東京電力管内では法的強制力を持つ節電が行われたのに対し,関西電力管内では法的強制力を伴わないソフトな10%の節電要請に留まったため,と考えられます.

続きはその3で記載します.

2016年10月9日日曜日

電力供給の統計モデリングのお話(その1)

オペレーションズ・リサーチ学会機関紙 vol.61 no.10に,政策研究大学院大学の土谷隆先生(私の師匠の先生)との共著,
「最大電力供給の統計的解析と節電について−東日本大震災がもたらした構造変化−」 (pp.64-76)
が掲載されました.この研究は私のコアの研究のうちの1つで,博士号を取得した2012年から開始した研究です.

2年前に投稿したのですが,紆余曲折を経て,この度掲載されました.

今回はこの研究について少し説明したいと思います.ちょっと長くなるので数回に分けて載せます.

もともとの研究の切っ掛けはいうまでもなく2011年3月11日に発生した東日本大震災と福島第一原発の事故で,これらを切っ掛けに電力需給をめぐる情勢は大きく変化しました.今年の4月からは,電力小売り自由化が実現しています.この電力小売り自由化に伴って,電力需給を適切に解析して予測に繋げることも重要となっています.

また,昨今のエネルギー政策も相まって,電力需給に対する関心は高い印象を受けます.

ですが,電力需給の解析は,気温や,社会的状況など色々な要素が絡んでおり,簡単にできるものではない印象を受けます.とはいうものの,電力需給構造を解析することは今後の電力需給のあり方を議論する上では非常に重要です.

そこで,我々の研究では,最小二乗推定という簡単な統計モデリングの手法(ここがポイント)を用いて,電力需給構造を解析することを目指しました.データについても,誰でも入手できる,需給検証委員会のデータ,気象庁のデータ,Yahoo!天気のデータを用いることで,平易かつ透明性のある議論ができるようにしました.

対象としては2009年から2014年の東京電力および関西電力のデータです.これらは先に述べたように簡単にデータは手に入ります.

さて,最小二乗推定を行う場合,最大電力需給量を目的変数とするのは良いのですが,何を説明変数にするかがポイントになります.今回の論文では,「最低気温」「最高気温-最低気温」「最低電力供給」に着目しました.

気温については,「最低気温」「最高気温」「最高気温-最低気温」とした場合,このうち2変数を選んだ場合,それぞれ説明力は同等ですが,我々は,一日の最低電力供給を基準値として,一日の気温差が一定であれば大凡最低電力供給の差がそのまま反映されるというイメージでモデルを作成しました.また,気温差以外の不確定要素は最低電力供給に反映されていると考えています.

なお,モデルを作るに当たっては,7月10日〜8月31日の平日晴天時のデータを用いており,盆休を8月13日〜15日として,この期間を休日とみなして除いています.

上記のように各年ごとに得られた電力供給のモデルを,「2009年モデル」「2010年モデル」などと呼ぶことにし,ここでは,「2009年モデル」と「2010年モデル」について述べます.下の図は,2009年モデル(青三角)と2010年モデル(赤四角)による,最大電力供給の予測値(横軸)と実測値(縦軸)の関係を表しています.


  

2009年モデル,2010年モデルともに45°線上にほぼ乗っており,予測値と実測値に殆どズレがないことがわかります.

次に,2009年モデルで2010年の電力供給を予測した場合,および,2010年モデルで2009年の電力供給を予測した場合が下に図になります.プロットの見方は先程と同じです.下の図の上側は,2009年モデルで2010年の電力供給を予測した場合,下側は,2010年モデルで2009年の電力供給を予測した場合になります.


図を見ると,2009年モデルで2010年の最大電力供給が予測でき,また,2010年モデルで2009年の最大電力供給が予測できていることになります.(45°線にほぼ乗っていることからわかります)

実はこれは結構面白い話で,2009年は冷夏,2010年は酷暑と,非常に気候条件が異なっています.普通であれば,「冷夏である2009年モデル」で「酷暑の2010年の最大電力供給」を推定することは難しい印象です.ですが,この結果では,2009年モデルによって2010年の最大電力供給も説明でき,また,2010年モデルによって2009年の最大電力供給も説明できている,ということが説明できます.

続きはその2で記載します.

2016年10月5日水曜日

電気三学会関西支部講習会で講演します

10月28日(金)に,電気三学会(電気学会,電子情報通信学会,映像情報メディア学会)関西支部の講習会でお話させて頂きます.

「ドライバモニタリング技術の研究開発動向と展望〜自動運転の時代に向けて〜」という題目で,生体計測の話です.

私の他に,(株)ATRの正木信夫氏,横浜国立大学の杉本千佳先生,大阪府立大学の久本秀明先生,パナソニック(株)の酒井啓之氏がご講演されます.

詳細については下記URLをご参照下さい.
http://www.ieice.org/kansai/senmon/161028.html