2015年11月13日金曜日

シバヤギの研究についてのお話

昨年から,東京農工大学の臨床繁殖学研究室と共同研究で,シバヤギの行動解析に関する研究を開始しています.

きっかけは昨春に中京圏の新聞と静岡新聞で取り上げられた私の研究成果です.
私の博士論文の内容であるマウスの行動の自動推定に関して発展させた内容,
マウスのトラッキングから行動の推定までを行うフリーソフト,"Duomouse"の開発が
Journal of Neuroscience Methodsに掲載されたのですが,
非常に面白いということで,学長の指示で,プレスリリースすることとなりました.
その結果,研究成果が,中日新聞,東日新聞,静岡新聞に掲載されました.

私はずっとマウスを対象にしてきたのですが,ヤギやウシなどの大型動物の行動解析で,
Duomouseのように工学的手法を取り入れた例は余り見られない,
同じ,もしくは改良したアルゴリズムを使って行動推定ができれば非常に助かる,
ということで,大型動物を対象とした行動自動推定の研究が始まったという訳です.
特に発情期の判定ということに使えると非常に画期的なのだそうです.

マウスの場合は,
「無関心行動」「性器(匂い)嗅ぎ行動」「追随行動」「攻撃的追随行動」 「攻撃行動」
の5パターンに(我々の研究では)分類しているのですが,
「攻撃的追随行動」「攻撃行動」は発現の頻度が非常に少ないこともあり,
現在は,「無関心行動」「性器(匂い)嗅ぎ行動」「追随行動」の3つの行動を機械学習で
分類する,ということにしています.

一方,例えばヤギの場合は,雌のシバヤギを基本として,雄のシバヤギのパドックへの
接近の様子について検討しており,発情を例に取れば,「非発情」「雄パドックへの接近」「雄パドック付近で静止」
というように,雌のシバヤギの行動を分類すれば,これまた3つの行動と分類できます.
そのため,雌シバヤギの行動の特徴量を上手く抽出すれば,マウスの場合と同様のアルゴリズムで良いのです.

ですが,この特徴量の抽出が結構厄介なのです.
全く発情していないにもかかわらず,雌シバヤギが雄シバヤギのパドックに興味本位で近づいたり,
突っ立っていたりするケースが結構多いなど,なかなか一筋縄ではいきません.
「こんな感じの物理量で検討すれば良いか」と決め打ちしてみても上手く行かないのです.

そんなこともあり,先日,東京農工大にお邪魔して,ヤギ舎と牛舎を拝見しました.
見ると聞くは大違いと言うのはまさにこのこと.
ヤギ,ウシともに想定したよりも行動が複雑でした.
さてどのような物理量を以って機械学習させるか,ますます悩む結果となりました.
その一方で,現在進めているトラッキングを基本とした検討以外にも,
様々な要素(例えば鳴き声など)からヤギやウシの行動の検討もできるのではないか,
などと色々なアイディアが出てきました.
行動だけでなくヤギ同士の力関係(ヒエラルキー)の推定など,
ひょっとしたら変わった知見も得られるかも知れません.

何れにせよ,獣医学(農学)と工学+統計科学のコラボということで,
独特で面白い成果が出せるように,この研究を大事にして行きたいと思います.





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